調理化学の意義と目的---調理化学とは何かを知る
食品の栄養価値を発揮する調理とは 栄養バランスのよい献立
適切な調理技術
衛生上の知識を持っている
食品の調理にあたって必要なこと 栄養的に効率の高い食材の用い方ができる
おいしい
衛生的で安全である
調理にあたって食品の性格を知る 食品化学的性格
物理学的性格
化学的性格
生物学的性格
調理過程に起こる現象と諸科学との関係を解明する---調理を系列化する
調理の秘訣 これは経験が伝統的に残されたものであるが、食品の重量・体積・温度・加熱時間を計測することによって解明できるものがある。
例)ゆで卵は、湯で時間の計測によっておいしくなる
フォンダン・抜糸(糸引き)は、温度の管理が重要である
<調理科学の学習は調理技術の習得につながる>
調理科学のための基礎知識---調理に際して科学を基礎にする
熱の伝わり方-温度の高いほうから低いほうへ伝わる
伝導 物を伝わって熱が伝わる
物質の伝導率 大 熱が早く伝わり、保温性が低い (金属類は急速加熱の調理器具に使われる)
物質の伝導率 小 温度が上がりにくく、保温性が高い(耐熱ガラス・陶磁器はゆっくり加熱して保温が持続する)
対流 気体や液体に流れができて、熱が伝わる
水・空気は熱せられると膨張して密度が低くなるので軽くなり対流が起こる
例)大量炊飯時の湯炊き-水炊きだと沸騰までに時間がかかり、底部の米のでんぷんが糊化して汁が粘って対流が妨げられるが、湯炊きにすると対流する
例)と゜ろっとしたスープや葛湯- 対流が起こりにくいので冷めにくい
例)冷房器具を壁の上部に設置する-空気の対流によって室内全体が冷える
放射 熱が直接受熱面に届くような熱の伝わり方で反射させることもできる
(輻射) 放射熱 大 電熱・炭火
放射熱 小 ガス
放射熱の利用を高めるには、受熱面を近づけたり、受熱面を黒くざらつかせる
熱効率-燃料の持つ発熱量のうち利用できる度合い
燃料の違いによる熱効率
ガスの熱効率50%<電磁調理器80~90%
燃焼器具の違いによる熱効率 (都市ガスの場合)
ストーブ100%>ガス風呂65~70%>ガスコンロ45~55%
使い方の違いによる熱効率
注意して使用した場合15%増>不注意に使用した場合
比重-物質の質量と同体積の標準物質の質量との比
同じ体積でも重さが違う(物質の密度)
標準物質 固体・液体-1気圧4℃の時の蒸留水
気体-1気圧0℃の時の空気
比重が1より小さいものは水に浮き比重が1より大きいものは水に沈む
例)純アルコールの比重は0.807(水に浮く)<砂糖の比重1.61(水に沈む)
例)卵白の泡の比重<砂糖入り寒天の比重 凝固温度に達しないとき、卵白は上部に、砂糖入り寒天は下部に分離する
例)水の比重>氷の比重 氷は水に浮く
比熱-物質1gの温度を1℃上昇させるために必要な熱量:水1gを1℃上昇させるために必要な熱量1cal
水1cal/g℃>油0.41~0.43cal/g℃ 油は水よりも加熱時間が短くて温度上昇する
加熱調理・保温・冷蔵においては比熱を考慮すること
潜熱-状態変化のために使われる熱
気化熱(蒸発熱)-液体が気化するときに周囲から吸収する熱量
水1gが気化するときに必要な熱量は539cal
調理で利用する気化熱(潜熱)
蒸し料理(餅米・芋など)...水蒸気が液化して食品に水分と熱を与える。食品の表層が100℃になったとき蒸し器の蓋の穴から水蒸気が噴出する。火力が強いほど早く加熱
される。
融解熱-固体を同じ温度の液体に変えるのに必要な熱量
氷による冷却-氷は融けるときに周囲のの熱を1gあたり80cal吸収する
氷の融け方が早いほうが早く冷却できるので、食塩(寒剤)を用いて急速に氷を融かすと急速冷蔵できる
熱膨張-物体は加熱によって体積が増加する
気体は1℃上昇するごとに、0℃のときの体積の1/273膨張する
卵白気泡によるスポンジケーキの膨張
水4℃の時の体積が最小
氷の体積は水4℃の10%増-冬の水道管の凍結破裂
(温度-4℃)×1/273膨張する-圧力鍋
沸点-液体が沸騰し始める温度
純水は1気圧のとき、100℃で沸騰する
気圧と沸点 気圧が高いと沸点も高い-圧力鍋は沸点が高く(15ポンド/in2 120℃)、高温で゜加熱されるために食品が柔らかくなる
気圧が低いと沸点も低い-高山での調理は気圧が低いので沸点が下がってよく煮えない
天然果汁の濃縮は減圧容器の中で低い沸点で過熱させて水分を蒸発させるのでビタミンcが破壊されない
溶液は濃度によって沸点が違う 蔗糖溶液の沸点の違いを利用して調理を行う-塩水・砂糖水は純水より沸点が高い
融点・凝固点-融点は固体が加熱されて液体になる温度(1気圧時)、凝固点は液体が固体になる温度
油脂の融点 牛脂・羊脂 約45℃
豚脂・馬脂 約40℃
鳥類脂 35~37℃
バター・やし油 24~32℃
凝固を利用した料理 鶏卵の加熱
寒天・ゼラチンの加熱溶解後の冷却による凝固
※ゼラチンは凝固点が低いので凝固・保存は冷蔵する
氷点
氷の融点=水の凝固点=1気圧下で0℃
他の物質が溶けている水の氷点は下がる-酒・砂糖水・アイスクリーム
氷3:食塩1の氷点は-20℃位
粘度-流体の粘る性質を粘性といい、粘性の度合いを粘度という
粘度によってテクスチャー(触感、味)に違いが出る
粘度の高い料理 吉野汁・シチュー・ポタージュ・ホワイトソース
粘度の低い料理 すまし汁・コンソメスープ
温度によって粘度が違うホワイトソースの小麦粉の量
温度が低いと粘度は高い
冷性パスタホワイトソース-小麦粉を少なくして粘度を低くする
温度が高いと粘度は低い
グラタン-小麦粉を多くして粘度を高くする
加熱によって粘度が違う小麦粉
炒めない小麦粉は粘度が高い
炒めた小麦粉は粘度が低い-スープ・ソースが流れやすくなる
界面張力・表面張力
界面とは、二つの相(固体・液体・気体)の境界面のこと
界面張力とは界面の面積を減少させる力-たとえば、平面に落ちた水滴はそれ自身の水分子によって内側に引っ張られて半円球になる
表面張力とは表面積を縮めようとする力-たとえば、はすの葉の上の水球
表面張力の小さい液体は泡立ちやすい→液体の表面張力は温度が上がると小さくなる
卵白は固まらない程度に温度を高くする(30℃以下)と表面張力が小さくなり、泡立ちやすくなる-メレンゲ・淡雪かん・フリッター
冷えていないビール泡立ちやすい
界面活性剤は二相を混ざりやすくする
卵黄のレシチンやからしが界面活性剤となり、油とよくまざってマヨネーズができる
浸透圧-濃度の異なる溶液の水は高濃度の溶液側に移る(浸透) その圧力を浸透圧という
野菜や魚などの下処理に使われる食塩・佐藤は浸透圧の現象を利用したもの
野菜類に塩を加えると多量の水が出てくる-食塩によって野菜の内部と外部の浸透圧に差ができて、野菜内部の水が外部の食塩水のほうへしみ出る。
拡散-溶液の濃度が違っても自然に一様な濃度になる現象(全体が一様に混ざり合う)
食品を調味料の中で煮ると味が浸み込む-拡散作用
分子量の小さいものほど早く食品に浸み込-食塩(分子量58)よりも、砂糖(分子量342)を先に煮汁に加える
煮汁の味が時間(約30分)とともに浸み込む-芋棒
表面は味が濃いが、中には味が浸みていない。噛み砕くことによって口の中で味が均一になる-芋の煮ころがし
溶液
溶質 溶媒
食塩水 塩化ナトリウムが水に溶けた溶液 イオン溶液
ビール 炭酸ガスが 水に溶けた溶液 アルコール溶液
炭酸水 炭酸ガスが 水に溶けた溶液
砂糖水 砂糖が 水に溶けた溶液 分子溶液
ゼラチン液 ゼラチンが 温水に溶けた溶液 コロイド溶液
天然果汁水 果肉微粒子が 液体に分散した溶液 懸濁液
コロイド溶液(膠質溶液)
ギリシア語でニカワ
微粒子(1~100ミクロン)が気体・液体・個体に溶けない状態で分散している-食物の味に影響
同じ砂糖濃度・温度の砂糖水とくず湯では味が違う
コロイド状の食品-肉・魚などの生鮮食品・ゼリー
コロイド-分散質の微粒子が分散媒のなかに分散している
ビールの泡・抹茶の泡 泡沫コロイド
牛乳・マヨネーズ 乳濁液
バター 乳濁液
天然果汁 懸濁液
マシュマロ 固体コロイド
ゼリー 固体コロイド
懸濁液(サスペンション)
液体のなかに固体の微粒子が分散しているもの
例, 果汁
乳濁液(エマルジョン)
液体のなかに他の液体の微粒子が分散しているもの
例、牛乳-水の中に脂肪が分散したもの(タンパク質カゼインがカルシウムと結合してコロイド粒子として分散している)
水中油滴型乳濁液
例、牛乳・マヨネーズソース
※マヨネーズソースを薄めるためには水や酢を入れる。濃くするためには油を入れる。
油中水滴型乳濁液
例、バター・マーガリン
※バターの水分16%、脂肪80%、食塩1.9%
ゲルとゾル
ゾル--コロイド溶液--生卵・豆乳
↓加熱
ゲル--ゾルが凝固したもの--茹で卵・豆腐
冷却によってゲル化する寒天・ゼラチン
ゼラチンゼリー(濃度2~4%)--ゲル化(凝固)温度3~10℃
--ゾル化(液体化)温度20~25℃
寒天ゼリー--離奨
--ゾル化(液体化)温度100℃
濃度
溶媒中に融けている溶質の比率 パーセント濃度
10%食塩水--水90g 食塩10g
9%食塩水--水100g食塩10g
飽和溶液と溶解度
飽和溶液--溶媒に溶質を溶けるだけ溶かした溶液
溶解度--飽和溶液に含まれる溶質の濃度
蔗糖は温度によって溶解度が違う--温度が高いほど溶解度は高い
○熱いコーヒー・紅茶に砂糖はよく溶ける
○冷たいコーヒー・紅茶に砂糖はよく溶けない
○フォンダン--高温の濃厚な蔗糖液を低温にすると結晶を生じる(過飽和状態)
食塩の溶解度は温度で差はない
気体の水に対する溶解度は温度が高いと減少する--ビール・炭酸水・サイダー
酸とアルカリ
電解質(酸・アルカリ・塩類)は電流を通す
酸味の強弱は水素イオン(PH)で測る--含まれる水素イオンの量で酸味が異なる
酸性<PH7(中性)<アルカリ性
○食べて美味しいPHは7より小さい(弱酸性)
○酸味を感じるPHは4より小さい
○不快な味のPHは3以下、8以上
緩衝作用
水溶液中のリン酸塩・有機酸・アミノ酸が酸・アルカリと結びついてPHを一定に保つ働き
一定のPHでなければ生物は生存できない→生物の細胞液・血液の緩衝作用によるPHの保持
調理につかう調味料は緩衝作用の強いものがよい
水で薄めた5%しょうゆ・ 水で薄めた10%味噌はPHの変化が少ない
酸化
物質に酸素が化合したり、水素が取り去られることを酸化という
料理における酸化は味・香り・色・外観を悪くするとともに、栄養価損失の原因となる
脂肪類は酸化しやすいので、空気中に長時間放置したり、高温調理すると酸化する
○油焼け--食品中の不飽和脂肪酸が酸化したもの
○ビタミンA・Cは酸化すると効力を失う
○色素は酸化によって変色する
調理の研究